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[開業20周年]
医局日誌
〜Doctor's column〜

Episode 15:お婆ちゃん

意識ははっきりあるが、反応が遅く少し、ほんの少しぼけているお婆ちゃんが患者さんでいた。その方は私がある講師の先生のアシストをしているときの患者さんで、舌白板症(粘膜が白く角化する。まれに悪性化する。)だった。娘さんと一緒に来院していた。足もおぼつかないが、言葉もおぼつかない。「う~」とか「あ~」しか言わないおばあちゃんを娘が通訳している。講師の先生は若干気の短い人だった。

娘「おばあちゃん、口開けてだって。」おばあちゃん「う~あ~」ゆっくり開いてきた。講師「そー、もっと大きく!」娘「もっと大きくだって、おばあちゃん」お婆ちゃん「あ~、うぁ~」泣きそう。講師「麻酔して組織の一部切るから、動かずにね!」反対側からお婆ちゃんの唾液を私がサクションする。
お婆ちゃんぱくんと口を閉じる。講師「あ~、なんで閉じるの?」やや苛立っている。娘「痛いらしいです。」講師「喜代崎(旧姓)君、サクションが痛いっていってるぞ!」とその時、すごい勢いでお婆ちゃん首を横に振る。
娘「ちがうみたいです・・。」講師「そこまでやくさないでもわかる!」あ~、もう怒ってる。講師「喜代崎(旧姓)君もね、もっと私がやり易いように環境をつくりたまえ!」私「はい・・。」どうやって?講師「もっと口角ひっぱって!」私「はい・・。」ぱくんとまた口を閉じる。講師「あ~、また閉じる!開ける!ほら喜代崎(旧姓)君もひっぱって!」私「・・・。」もはや無言。講師「あ~!」娘、無言。

お婆ちゃん「う~、あ~!」講師「あ~!」娘、私、無言。もうどっちが言語障害だか分からん。どうにか組織採取終了。講師が去った後、私は次回アポイントと術後注意をしていた。娘「先生ご苦労様です。本当に申し訳ないです、お祖母ちゃんのせいであんなに怒鳴られて。」私「いえいえ、慣れてますから大丈夫ですよ。私はいいですがお婆ちゃんが大変そう。私のことは考えなくていいので・・?!」お婆ちゃんは、満面の笑みを浮かべ、私の腕をにぎっていた。ぼけてない。しかも、いい人だ。すまない。泣きたくなった。

-写真はイメージです-

このコラムについて

※2006年に掲載したドクターズコラムを再編集したものです。
※当時の表現を使用しているため、読みづらい部分があるかと思います。

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