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医局日誌

プロローグ

Episode 1:

大学卒業してすぐ、私は大学病院の口腔外科の医局に残った。おおよそ一般歯科とは程遠い診療が多く、よってしばしば死亡診断書をみることもあった。
そういった場合の多くはたいてい癌の患者さんであった。私は思う。口腔癌ほど患者にとって辛い癌はないと。口の中の癌は進行するとたちまちその顔貌を変えてしまう。患者みずからが、鏡をみながら己の病状の進行具合を確認することになるのだ。しかも例えようもない痛みと戦いながら。よく「ホスピタル」という言葉を聞く。病院を意味することで使われている。

しかしこの語源は病院を意味するものではないらしい。ホスピタルの派生語は「ホスピタリティー」である。「歓待、厚遇」の意味だ。病院はそこを訪れる人にとって、そんな場所であって欲しい。痛みに耐え、苦しみに耐え、毎日処置室に向かう彼らにとって、病院が真の「ホスピタル」であったのだろうか・・。もちろん現実的に無理な部分もあると思う。
だから余計、私が作る小さな診療所だったら、もっと癒される場所になるはず!と思うようになった。それが私の診療所作りの根底だ。

もちろん大学病院での毎日が、辛いことばかりではなかった。たくさんの喜びももらった。勉強するのが好きになった。必ず役にたつからだ。当たり前のことだがなかなか実感できないもの。それを経験することができた。患者さんの幸せそうな笑顔も思い出す。生涯勉強、常にホスピタリティーの精神を。この二つは私の目標になった。
次回はそんな大学病院時代の出来事・思い出を書いてみたい。

-麻酔科出向になった当時。オペ室似て-

このコラムについて

※2006年に掲載したドクターズコラムを再編集したものです。
※当時の表現を使用しているため、読みづらい部分があるかと思います。

EPISODEエピソード一覧

その1
その2
土日処置
その3
天の一声
その4
筋力
その5
地下室
その6
骨折
その7
大所帯
その8
うれしかったこと
その9
吸引
その10
複雑
その11
無言
その12
忘れられない
その13
息子
その14
点滴
その15
お婆ちゃん
その16
病気