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[開業20周年]
医局日誌
〜Doctor's column〜

Episode 23:上司

全身麻酔のオペで自分が術者だったことがある。ファーストアシスタントに私の尊敬する先生が病棟グループのオーベン(トップ)だったのでついてくれた。静かにスタートした。目の下にある上顎洞という空洞にある膿胞(膿の袋)をとってくる手術だった。広範囲でしかも癒着が強く、苦戦していた。出血が出始めた。サクションしてもすぐに湧き出てくる、この感じは血管層の損傷を意味した。
私の額に汗がにじんだ。オーベンの先生がおもむろに私とチェンジした。

すぐにこれは困難であることがわかった。彼の額にも汗がにじんできた。オペ用滅菌ガーゼを手に取り、一瞬ためらった後、自分の額の汗をぬぐい、床に捨てた。私は・・・。助教授が入室して来た。というか呼んだ。「肥厚してますねぇ。癒着も強い。血管層に入り込んでいて・・、やっかいですね。」淡々とそれは行
われた。予定手術時間は過ぎていた。隣のオペ室で手術をしていた教授がオペを終わらせ、入室して来た。助教授「少し出血しましたが、問題なく、はい、終わりますね。」教授「そうか。」短いやりとりだった。そして無事オペは終了した。

術後カンファレンスが始まった。私のグループの番になった。オーベンのドクターが説明し始めた。「だからどうして出血したんだ。なぜ手術時間がのびたんだ?」きつい言い方だった。私のせいかもしれない・・。「血管に強く癒着しており・・・、」「最初はどうだった?」「広範囲にわたり・・、」私のせいだ・・。
病棟全グループの前でかなりの責められ方だった。その後医局室にもどった後謝った。私「どうもすいませんでした。」先生「なんのこと?」それ以上何も言わなかった。彼のプライドの高さと優しさの両方を思い知った。上司とはこうであるべきだ。そう思った。

-手術室にて。-

このコラムについて

※2006年に掲載したドクターズコラムを再編集したものです。
※当時の表現を使用しているため、読みづらい部分があるかと思います。

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